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日本一の音 -12年ぶりの”BASIE”再訪-


 2007年以来、12年ぶりに岩手県 一関 ジャズ喫茶 “BASIE”を訪問しました。2007年は私たち夫婦がsonihouseを始めた年です。実は新婚旅行としてこの聖地を訪れました。とても緊張しながら真っ暗な店内に入ったことをはっきりと覚えてます。そして今回、ありがたいご縁を頂いてオーナー 菅原正二さんに直接ご挨拶させて頂く機会を得ました。とても光栄でうれしい反面、ある意味初回より緊張するシチュエーションでした。しかしこちらの緊張を察して気さくに接して頂き本当にうれしかったです。

まず、BASIEをご存知ない方はwikiをご覧ください。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%82%A4%E3%82%B7%E3%83%BC

 wikiの中で”「日本一のジャズ喫茶」と紹介され、「日本一音の良い喫茶店」として知られている。”とありますが、BASIEを訪れたことがある方ならほとんど異論はないだろうと思います。そして、BASIEに限っては「音が良い」という言葉が非常に陳腐に思えます。その音をジャズミュージシャンの渡辺貞夫さんは「アーティストの音をタッチさせている」と述べています。初めて訪れた時に感じたのもそんな感覚でした。レコードの溝の中に詰まっているものが耳を刺激する単なる音ではなく、その演奏がされた場所や時代の空気とミュージシャンが一音ずつに込めた情念みたいなものがエネルギー体みたいなものとして封じ込まれ、そのすべてがスピーカーから再生されているようでした。言わばタイムマシーンのようにここでない場所に連れって行ってもらったように感じました。そこに楽器があるような…という表現はよくあると思いますが、50年代や60年代の紫煙たなびくジャズクラブの空気そのものまで、そしてミュージシャンが時にクールに時にアツくプレーする様やお互いが目配せを送りあう様子まで見えるように感じることはなかなかないと思います。スピーカーの低音がどうとか高音がどうとかなんて子供みたいな話は全部忘れて、自然と涙を流しながら音楽に没頭しました。

 この大掛かりなスピーカーシステムから、スピーカーの存在を消し去って音楽がある風景そのものを再現する様は奇跡のように感じます。よく勘違いすることが多いのですが、ここまでの音にするには単にスピーカーを部屋に置いて終わりではありません。その使い手の感覚を反映させるために空間の使い方や、オーディオ機器のセッティング方法、電源の取り方やケーブル類、その他の細かいことにまで手を入れることで音を磨き上げ理想の音に近づけていくのです。
 人に音を聴かせることを生業にするとはどういうことか。スピーカーから放たれる轟音から、その厳しさや果てしのなさ、深遠さをぐっと噛みしめていました。けどその凄まじい音の中でも端正な音のかたちと肌理の細かさの心地よさ、そして演奏家の遊び心が滲みでるような楽しさを感じることができました。音がそこにあるがままに存在する自由さ。その芯のところで自分が向かう音の方向は間違っていないと実感する2時間半の滞在でした。
 そして、東北の震災で甚大な被害を受けられ、その後何とか再開されたと聞いていたので12年前と変わらない店内の風景にホッとしました。来年で開店から50周年だそうで、これからもできるだけ長くお元気でジャズの素晴らしさ、音楽の素晴らしさを伝えて頂きたいです。

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